作業現場での暑さ対策は、熱中症予防のために非常に重要です。適切な作業服を選ぶことは、その対策の中心となります。
暑さ対策の基本的な考え方
作業現場での暑さ対策は、服装だけでなく、環境整備や作業管理、そして作業員自身の健康管理を組み合わせることが重要です。
水分・塩分補給: こまめな水分・塩分補給は必須です。自覚症状がなくても定期的に摂取するよう指導しましょう。
休憩の確保: 定期的な休憩は熱中症予防に不可欠です。日陰や冷房の効いた休憩場所を設け、暑さ指数(WBGT)に応じて休憩時間を調整しましょう。
作業環境の整備: 大型扇風機の設置、散水、簡易的な日よけ(テントなど)の設置、ビニールカーテンなどによる局所的な空調効率改善などが有効です。
作業時間の調整: 暑い時間帯の作業を避けたり、作業量を減らしたりする工夫も必要です。
健康管理: 作業員の体調を把握し、体調不良者には無理をさせない配慮が必要です。
作業服の選び方
暑さ対策に特化した作業服を選ぶことで、体への負担を軽減し、作業効率を維持できます。
1. 空調服(ファン付き作業服)
最も効果的な暑さ対策の一つです。服の中に小型ファンが搭載されており、外気を取り込んで衣服内を循環させ、汗の気化を促進して体温を下げる「生理クーラー®」の効果を高めます。
選び方のポイント:
バッテリーとファンの性能:
風量: 強力な送風能力を持つファンを選びましょう。最大風量100リットル/秒を超えるものや、ハイパワーモード搭載のものがおすすめです。
バッテリー容量: 作業時間に合わせて、長時間稼働できる大容量バッテリーを選びましょう(8時間以上稼働できるものが目安)。
耐久性・保証: 安定した品質で、メーカー保証がある製品を選ぶと安心です。
防塵・防水機能: 屋外や水を使う現場では、防塵・防水機能(JIS IP68など)があるファンが適しています。
ファンの配置: 脇や背中など、風の抜けやすさを考慮した配置のものがおすすめです。サイドファンやハイバック仕様も選択肢に入ります。
お手入れ: ファンが取り外して丸洗いできるタイプだと、清潔に保てて便利です。
ウェアの素材:
ポリエステル100%: 軽量で耐久性があり、速乾性に優れています。シワになりにくいのもメリットです。
綿100%: 肌触りが良く、吸湿性に優れています。溶接などの火花が飛ぶ現場では、難燃性の観点から綿素材が適しています。ただし、乾きにくい点には注意が必要です。
ポリエステルと綿の混紡: 両方のメリットを兼ね備え、バランスの取れた素材です。
遮熱加工・UVカット: 裏アルミコーティングやチタン加工が施されたものは、太陽光による熱や紫外線をカットし、冷却効果を高めます。
撥水加工: 多少の雨や水滴を弾くものもあります。
ウェアの形状・機能性:
サイズ: ウェアの中で空気がしっかり循環するように、ややゆとりのあるサイズを選びましょう。普段着よりもワンサイズ大きめがおすすめです。ただし、大きすぎると風が逃げてしまうので注意が必要です。
袖の長さ:
長袖: 手首まで風が循環し、上半身全体を効率よく冷やします。日焼けやケガの防止にもなります。屋外作業や危険を伴う現場におすすめです。
半袖・ベスト: 腕の動きやすさや通気性が高く、屋内の高温環境や軽い作業に適しています。袖口や裾からの風の抜けを考慮したデザインを選びましょう。
フルハーネス対応: 高所作業では、フルハーネスを着用しても空調服の機能が損なわれないように、専用の設計がされたものを選びましょう。
立体的な通気路: 首筋など、風が効率的に抜けるように工夫されたデザインのものがより涼しさを感じられます。
2. 冷感作業服・インナー
空調服と併用することでさらに効果を高めます。
吸汗速乾性: 汗を素早く吸収し、乾かすことで、肌のべたつきや不快感を軽減します。ポリエステルや特定の合成繊維がこれに優れています。汗をかいても体が冷えにくい効果もあります。
接触冷感素材: 肌に触れた瞬間にひんやりと感じる素材です。熱伝導率が高く、体温を効率的に奪います。Q-max値(接触冷感評価値)が0.2以上であれば冷たさを感じられますが、0.3以上だとより効果的です。
通気性・メッシュ素材: 体内の熱を逃がすために、通気性の良い素材や、脇下・背中など汗をかきやすい部分にメッシュ素材が使われているものを選びましょう。
UVカット機能: 直射日光の下での作業では、紫外線から肌を守るUVカット機能(UPF50+など)のある長袖作業服が有効です。
3. その他の考慮点
色: 太陽光を反射し、熱を吸収しにくい白や淡い色の作業服がおすすめです。ただし、汚れが目立つ場合は、濃い色の作業服の下に明るい色の吸汗速乾インナーを着用するなど工夫しましょう。
フィット感: きつすぎると通気性が悪くなり、逆に熱がこもりやすくなります。適度なゆとりがあり、体の動きを妨げないものを選びましょう。
補助アイテム:
冷感タオル: 水に濡らして首元を冷やすことで、体温上昇を抑えられます。
ネッククーラー: 首元を直接冷却するタイプや、小型ファンが付いているタイプなどがあります。
アイスベスト(保冷剤用ポケット付きベスト): 保冷剤をセットして、脇や背中など熱がこもりやすい部分を直接冷やします。空調服が使えない現場でも有効です。
ヘルメットインナー: ヘルメット内の蒸れを軽減し、快適性を高めます。
作業内容や現場環境、個人の体質に合わせて、最適な作業服と暑さ対策を組み合わせることが、安全で快適な作業につながります。